かたり・三味線教授いたします。
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金時鐘 猪飼野詩集より「うた またひとつ」

金時鐘氏の卒寿のお祝いと渡日70年を記念する会が大阪大学で行われた。が、私には到底、金時鐘氏について語ることができるようなことばは持ち得ない。生き方がへなちょこすぎる。ただ、その尊敬を表すことは、できるだろう。その詩を、語ることで。ところが、これもまたなかなか難しい。なぜなら、そんな簡単な詩ではないからだ。そんな中で、「うた またひとつ」は私でも分かる気がするほとんど唯一の詩だ。私にできることは、これしかない。

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野生が目覚める 説経祭文の夜 犬たちのまつり

在京最後のビブリオ公演でした。ゲストはやはりこれから渡印する狂犬末森英機氏、日本に住まいなすインドのタブラ奏者の打犬ディネーシュ氏。道案内は妄犬姜信子です。私だけ、紛れ込んだ猪ということになりました。実は、昨年戌年の企画がここまで流れてしまったのですが、とにかく実現できてよかったです。ちょっとしたお別れ会的雰囲気が漂います。

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第一部 説経祭文 小栗判官照手姫 鬼鹿毛曲馬の段

どうせ、説経祭文は元来泣き物なんだから、笑えるような演目はないなと諦めていたら、道案内人が、「笑えるようにかえればいいじゃん」という。姜信子が補綴した「鬼鹿毛曲馬の段」。判官が、鬼鹿毛じゃなくて、猫鹿毛だねえと言うところで、どっと笑いがきました。説経祭文で素直に笑っていただいたのは、ひょっとすると百年ぶりくらいのことかもしれないと、本当に思う。

第二部 犬たちのまつり

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まあ、詳しくは、この本を手にとってご覧ください。三味線、ギター、タブラの中で姜信子が寄稿文を朗読。タブラの不思議は、三味線だろうとギターと、多分なんであろうと、余さず包み込んでしまう仏の手のような包容力でしょう。

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最後に乱入のGI猪が突然「腰まで泥まみれ祭文バージョン」を歌い始める。先月、大阪は鶴橋のとあるお店で初めてお会いした中川五郎さんに、ぶしつけながら、「腰まで泥まみれ」をコピーさせていただきたいとお願いをしたところ快諾をいただいていた。そして今日、中川五郎さんがいらしてくれるということなで、お礼にお聴きいただいたとう次第。ミリタリーな上着は前日に古着やで、ミリタリーな帽子は直前にダイソー仕入れる。本当に楽しい夜でした。次回は、なんと11月24日(日)です。今度は奈良からの遠征になるんだ。

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詩人金時鐘(キム シジョン)氏90歳のお祝い

1年前のフランスへ公演に出かけた時に持っていった本は、金時鐘氏の「猪飼野詩集」だった。ごつごつとゲンコツがとんで出てくるような詩がならんでいる。一週間フランスの片田舎の古城「真夜中劇場」に滞在して、毎日入れ替わりやってくる子供達に人形浄瑠璃を見せた。一日一公演だから空き時間がたっぷりある。フランスの古城の一室で金時鐘の詩と対峙したわけである。そのうち、「うた またひとつ」外いくつかの詩にすいつけられて節付けをした。フランス産れである。

この間は、「朝鮮と日本に生きる-済州島から猪飼野へ」(岩波新書)を読んだ。すっかり肝をわしづかみにされた。

最近遅ればせながら、ようやく朝鮮のことがわかってきた。日本と朝鮮の事実を残念ながら日本の教育は正しく伝えていない。近代日本の悪行を教師としての私は、正しく教えることができなかった。残念であるが取り返しはつかない。これからできることは、語り手として事実を語ることだと思う。

2月の旧正月に、幸運にも金時鐘氏の自宅にうかがうことができたので、無理矢理「うた またひとつ」を語らせていただいた。なんと無謀な・・・

日本語による日本語の破壊をしようとする詩を、三味線で語るというのはいったいどうなんだ・・・との声も。

まあ、とにかく、ご存命の内に、金時鐘さんに聴いていただいきたいという一心だったのですが、以下のようなことになってしまいました。

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6月16日 大阪大学中之島センターで、「うた またひとつ」を語れとの金時鐘氏よりのご依頼、承りました。

 

 

説経祭文 小栗判官照手姫 曲馬の段 in 国立ビブリオ

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このところ、新作の取り組みが忙しく、古典物はさっぱりである。しかし国立のギャラリービブリオでは、古典的説経祭文を披露しようと心がけている。

 とはいうものの、どこで聞いてみても、もう説経の物語を知っている人は、本当にいない。「山椒太夫」「信太妻」「信徳丸」「刈萱」「愛護の若」等々の中で、比較的知られていそうな「小栗判官」ですら、知っている大学生に会った事が無い。

 そんな状況ではあるが、少しでも楽しめるように、構成しなおしてみた。

6月8日(土)は、是非、国立ビブリオにおいでください。

 

説経祭文小栗判官照手姫 

 

床 薩摩若太夫正本 地乗り(10)~曲馬上(11)

天保11年:1840年)

補綴 姜信子 節付 渡部八太夫

さればにや、これは又、小栗判官一代記鬼鹿毛曲馬の段

・・

  龍と交わり

常陸の国に流罪となりました小栗殿でしたが

  女ぐせの悪いのは治りません

  今度は,相模の国、横山将監照元の娘

  照手姫の所に、押し入り聟を決め込みます

  怒りましたのは、父親の横山将監

  人食い馬の鬼鹿毛を仕掛けますが・・・

小栗判官正清は、人食い馬の鬼鹿毛

仏の妙法、説き聞かせ

龍の如くと、誉め上げて

しめ髪、掴んで、御身、軽ろ気に、

ゆらりと跨がり

先ず鬼鹿毛が足定め

前なる丸木一本橋へ乗り上げて

「しっし、どうどう」

「しっ」と追うては、

「どう」と留め、

なんなく萱野へ乗り出だす

鹿毛程なる荒馬も

小栗に、胴骨、乗り締められ

「ぶるるるる」

白泡、吹いたる有様は

凄まじかりける次第なり

其の時、十人殿原は

「我が君様と申するは

都に在りし時は、御菩提(みぞろ)ヶ池の大蛇を乗り取り

その後、常陸流罪あれば、照手の姫を乗り取った

今又、人食い鬼鹿毛を、乗りも乗ったり我が君様

乗せも乗せたる鬼鹿毛

天晴れ、馬の名人」と

やんや、やんや、どっとぞ、誉めにける

風にのったるその声が、横山御殿まで聞こゆれば

横山将監、立ち出でて

「あれ、三郎、萱野の方にて、人声がする

大方、小栗めが、鬼鹿毛の秣(まぐさ)になり

十人殿原めらの嘆きの声と覚えたり、へへへ、

さ、今から、萱野へ行て

せめて、捨て念仏など唱えてくりょう

幸い、花見がてらに参らん

ささ、早や疾く、用意、用意」

畏まって候と、

毛氈、花ござ、お茶やら弁当

酒樽を担いで、萱野へ急がるる

・・

さて、横山親子が、花見をして

いい気分になっておりますと

小栗殿が鬼鹿毛に打ち乗って

十人殿原引き連れて戻って参ります

これには、びっくり

「ひぇ、古(いにしえ)より

親捨てる藪はあれど、

我が身捨てる藪は無しと聞く

父上様、お先にごめん」

と三郎、只一散に逃げ帰る

後にも残る横山将監照元

逃げんとすれども老いの足

お茶やら、弁当に蹴躓き

おイモの煮っころがしで滑るやら

おきつ、ころんず、命からがら

おのれが館へ逃げ帰るは

見苦しかりける次第なり

・・

鹿毛を手なずけられてしまったので

横山親子は、曲馬をやらせて

恥を搔かせようとたくらむのですが

ご存知の通り、小栗は馬術の達人なのでした。

待つ間も程無く、小栗殿

桜の馬場へと乗り来たれば

三郎、それと観るよりも

碁盤を一面、馬場の半ばへ直されて

「此上へ所望」と、ありければ判官は

「心得まして候」と

只、一散に乗りあがり

碁盤の上に、四足(よつあし)留め(とどめ)

四ツ目殺しと見えにけり

「おのれ、小癪」と横山将監

御殿の建具をはずされて

送り出せば、三郎が

馬場の通りへ並べられ

「この上、所望」と、ありければ、

にっこと笑って判官は

襖(ふすま)障子の細道を

なんなく乗り分け、乗り降ろす

三郎、改め見て見れば

骨も痛まず、紙も破れぬ有様は

神変不思議の次第なり

三郎、あまりの面白さに

梯子を、一脚持ち来たり

手早く、御殿へ掛けられて

「この上、所望」と、ありければ

判官、心の内にて

「鞍馬大悲多聞天、神力添えさせたび給え」と、

深く念じて、梯子の桁

ひいふみいよういつむうななやあここのつとうと

とうとう屋根に乗り上げる

「ぶるるるる ヒヒーン」

「どうだ、どうだ」とばかりにて

彼方(あなた)へ走らせ、此方(こなた)へ駆け

あるいは、鞍立ち、敵隠れ

手綱の一曲、鞭の技

秘術を尽くして乗られける

横山御殿は、其の時に

みしみしみしと、地震に揺らぐ如くなり

堪らず、横山、屋根に向かい

「ああ、これ、婿殿

最早、曲馬は、どうぞ、ご無用でござる

御休息なさりませ・・・」

と、おろおろ顔、判官、屋根より見下ろして

「むむー、いかにとよ父上様

その古(いにしえ)、九郎判官義経

鵯越の逆落とし、さあ、それにてご覧候え」と

逆さ落としに乗り降ろし

その身は、ひらりと飛んで降りれば

鹿毛、桜の古木に繋がれて

しずしず、座敷に上がられる

横山将監呆れ果て

「いやあ、聞きしに勝りる馬の達人

将監照元、驚き入ってござる」

判官聞いて

「ほほー、申し、父上様

あのような、口柔らかなる馬を

如何なればとて、鬼鹿毛などと呼ばれ給うや

今日よりは、鬼鹿毛改め

鹿毛と名付けては、如何に候や」

と、言われて、横山親子の人々は

口惜しやと思えども

時の座興で苦笑い

「そりゃ、猫鹿毛じゃ」

と囃し立てれば

さすがは畜生、鬼鹿毛

「我が、小栗に乗られしを、あざ笑うか」と心得て

「ぶるるるる」

桜の古木を根こそぎに

馬場の外へと暴れ出す

横山親子は、驚いて

「これ、如何に、婿殿よ

このまま、捨ておくものならば

相模の国の人種が、忽ち尽き果てまする

ささ、どうぞ、早く、鬼鹿毛

呼び戻して下されや」

と、騒げば判官

芝繋ぎのまじないを、三遍唱え

扇子を開き

「鬼鹿毛、是へ」と招かれる

ものの不思議や、鬼鹿毛

馬場の外面(そとも)の方よりも

只、しおしおと歩み来る

あっぱれ、馬術の達人小栗判官政清

そのまま常陸へ戻るなら

なんの子細もあるまいに

照手の色香に迷われて

姫の館に戻られしは

ご運の末とぞ知られける

・・

  さて、娘を取られた上に

恥を搔かされた

横山親子の怒りは納まりません

  曲馬の慰労と偽って酒宴を催しまして

  再び、小栗を呼び寄せますと

  毒酒を盛りまして、毒殺です

  哀れ、小栗判官、家来共に

冥途の道で、いったい何が起こるのやら

本日は是まで

続きはは又のお楽しみ  

野生会議99企画 つながるゼミナール第2回目 おしらせ

西荻忘日舎でのつながるゼミナールの2回目は、6月22日(土)18:00からです。いわば難解な宮沢賢治の種明かしをしていくようなこの企画は、やる方も驚きの発見の連続です。

今回の演目「虔十公園林」は、すでに紹介済みですが、「少し足りない」ことを学びましょう。

そして、今、新たに制作中なのが、これです。

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同級生の保阪嘉内に宛てた手紙が、なんとも強烈です。「しっかりやりましょう。」と言われて、保阪嘉内は困っただろうなあと思います。この本から、抜き読みで、題して崎村良子・姜信子編「修羅成仏経」。崎村さんは、八太夫会一門で、今回朗読に協力していただきます。

制作中の台本の終わりの部分です。

 

      まだ、まだ、まだ、まだ

      こんなことではだめだ

 

      専門はくすぐったい

      学者はおかしい

      実業家とは何のことだ

      まだまだまだ

 

チーン(鐘)

 (繰り返す)  しっかりやりましょう × 20回 

 

       しっかりやりましょう!

 

        南無妙法蓮華経

 

チーン(鐘)

 

      哀しみは力に

      願いは、慈しみに

      怒りは、知恵に

      導かれるべし

 

又、山尾三省の「野の道」もお持ちください。虔十のことが書いてありますので。

 

マグノリアの木は私たちの善です

山尾三省の著『新版 野の道』(新泉社)の編集をされたアサノタカオ氏をゲストに招いての野生会議99つながるゼミナール西荻窪忘日舎で行われた。

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山尾三省が切り取った「宮沢賢治」と、それぞれの「野の道」について、話しが深められたが、マグノリアの木はあまりにも偉大というか巨大というか、次元を越えると言おうか・・・最後は、「むう、矛盾だな・・・」でつまってしまう。

 でも、まてよ、そんなに簡単に、急いで答えを求めなければならのか?正しいという答えは、一元化であり思考停止ではないのか。こんな一元論的な世の中だからこそ、別な意味の問いかけが生まれてくる。この世の中は矛盾してるのがあたりまえじゃないか。だけれども、「マグノリアの寂静印」は絶対なのだと断言する。それは、相対的なこの世でなく、あの世のことを指しているのだろう。   

 

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山尾三省の時代のヒッピーが、マリファナでようやく見たサイケな世界を、宮沢賢治はまだ直に感じることができたから、涅槃を記述できた。そして、今、その世界を浄瑠璃で顕現する。ざっと、そんな夜だった。

ライブ映像は、ユーチューブよりご覧ください。

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馬喰町アートイート 閉店イベント 終わる瞬間

2016年の1月には「猿八まつり」、2017年2月には「さまよい安寿」の企画をやらせていただき、CD付きの絵双紙「山椒太夫骨拾い」の段まで作った思いでの「馬喰町アートイート」が閉店されるとのことで、残念です。4月26日(金)にはラストイベントが開催されます。

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