理工学研究科新領域創造専攻・・・いったい、今の大学というのは何を教えているのかよく分からない。とりあえず、現代文学の最前線で「声」の意味を問うのだと言うから、姜信子の著書「声」(ぷねうま社)が取り上げられるのは理に叶っているようだ。そして、「鉄犬ヘテロトピア文学賞」という大変にマイナーで名誉ある文学賞を彼女が受賞した。
姜信子という作家と行動を共にしていると、いきおい「文学」の領域に連れ出されるのだが、私には「文学」自体もよく分かっていない。分かったふりをしても仕方無いので、大概は、どうも良く分かりませんと、尻を巻くっているのだが、今回の人々(作家や学者や音楽家)を観察していて、こんなことを思い出していた。
大昔、学生の頃、スキーコーチをしながら、とあるユースホステルで冬を過ごすのがお決まりだったが、大晦日の夜にコーチ仲間が集まって「紅白をぶっ飛ばせ」という出し物をするのだ。宿泊客を巻き込んで、歌や寸劇、コントやゲームをして遊ぶだけのことだが、これが結構大受けだった。「大晦日は紅白」という既成概念をぶっ壊す快感があった。これは、ひょっとしたら私の芸能活動の原点かもしれない・・・
まあ、同じ事ではないだろうが、どうも、何かの既成をぶっ壊して、新しい価値を自ら見出す。お仕着せ、あたりまえ、常識、権威、金といったもの達には従わないという点では、なにか自分と似た様な感じを受けた。
さて、「声」と言えば、私の活動領域そのものでもあるので、少しその「文学」の最前線を賑わすことになった。はたして氾濫なのか、反乱なのか・・・
姜信子作「声」より谺雄二氏の話「母を想えば」・・・祭文松坂の葛の葉と、谺氏の詩をミックスした朗読文の一部を、瞽女唄調子で今様祭文に仕立ててある。既に何回か披露してきたが、この唄は、やってる方がいつも涙ぐんでしまう。
もう一編は、新作「こよなく愛する」・・・説経「愛護若」を取り上げ、今回のイベントの為に姜信子が書き下ろした。ここでは、私は「語り部」として居るが、自らが語るわけではない。姜の朗読に合わせて「水」の音を奏でつづける事が新しい取り組みなのだが、唄でなく、朗読に合わせるというのもなかなか難しい。
朗読「こよなく愛する」・・・「愛護若」水の話・・・
背景の映像は、実際に山に行って沢や滝を撮影してきたもの・・・実は若狭、遠敷の鵜の瀬。東大寺の「お水取り」のありがたい「お水」も映っていました。
この水が、次の新しい「水」の物語に繋がって行く。新春公演の「八百比丘尼」が楽しみです。
討論会の様子:左から 中村和恵 姜信子 木村友祐 温又柔 管啓次郎 各氏
「鉄犬ヘテロトピア文学賞」第3回授賞式。同時受賞の石田千氏と。おめでとうございました。
木村さんよりの舞台写真追加します。