稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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平成29年 かたりもの八太夫会 お弾き初め

新年恒例のお弾き初め会。参加者は少し減りましたが、その分、みなさんじっくりと取り組みました。又、新弟子2名が披露されました。

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新弟子披露:三味線方 久保嶋奈美「数え唄」

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新弟子披露:太夫方 尤 聖一「源氏烏帽子折 竹馬段」文弥節 f:id:wata8tayu:20170115220632j:plain

 

長唄:鷺娘 三味線 石橋迪子 唄 八太夫

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説経祭文弾き語り 崎村良子 「信徳丸 継母呪い段」

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説経祭文語り 姜八景 「小栗判官一代記 車引段」三味線八太夫

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文弥節 「平家女護島 鬼界ヶ島段」 八太夫弾き語り

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なお、お客さんとして、付き合っていただいた、瓜田さん野口さん。長時間の押し売り説経に良く耐えました。ご苦労様でした。その功徳によって、きっと良い年になると思います。本年もよろしくお願いいたします。

  

 

新春「さまよい安寿」オープニングイベント

屋敷妙子「さまよい安寿」原画展のオープニングイベント第一夜「なにかが道をやってくる」 於馬喰町ART+EAT 新春早々のご来場、誠にありがとうございました。楽しんでいただけましたでしょうか。思った通り、とんでもない舞台になりました。

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まずは、新春を言祝ぐちんどん屋が出動(クラリネット:今村純子)

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次に絵双紙の読売が出ました。(読売:山口愛

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第一部は浪読「八百比丘尼の話」玉川奈々福・堀川久子・渡部八太夫この黒い三人組を見た方が、「八咫烏組?」とつぶやいたとか・・・説経三味線での「浪読」に初挑戦する玉川奈々福と、浪曲師に初めて三味線をつける八太夫との探り合いと、その狭間で踊る堀川久子。正月早々、こんなぞっとするような出し物でよかったんでしょうか。

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中入りの「占い」が繁盛・・・しすぎて、第二部がなかなか始まりません。              f:id:wata8tayu:20170108143510j:plain

屋敷妙子画伯と、謎の占い師。尚、会場では、原画即売を行っております。原画展は2月4日のエンディングイベントまで開催しておりますが、販売は早い者勝ちですので、お早めにご来場下さい。詳しくは、ART+EAT(03-6413-8049)まで

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説経祭文「三庄太夫 骨拾之段」 安寿の霊が現われる場面。写真ではよく分かりませんが、例の弓を使う奏法の場面です。堀川氏に十分踊っていただこうと、いつもの倍もやったでしょうか。撥を持ったり、弓を持ったり、その後は、竹棒で叩いたりと大忙しの曲です。

第二夜「哀しみは嵐になる歌になる」は、2月4日(土)午後3時開演。昼の部ですので、どうぞお出かけ下さい。

次回の演目は、姜信子の語り「こよなく愛する~愛護の若~」八太夫の説経祭文「三庄太夫 宇和竹恨之段」そして目玉は、屋敷妙子画伯と姜信子の対談です。乞うご期待。

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「平成山椒太夫」も好評発売中。

明治大学 声の氾濫 鉄犬ヘテロトピア

理工学研究科新領域創造専攻・・・いったい、今の大学というのは何を教えているのかよく分からない。とりあえず、現代文学の最前線で「声」の意味を問うのだと言うから、姜信子の著書「声」(ぷねうま社)が取り上げられるのは理に叶っているようだ。そして、「鉄犬ヘテロトピア文学賞」という大変にマイナーで名誉ある文学賞を彼女が受賞した。

 姜信子という作家と行動を共にしていると、いきおい「文学」の領域に連れ出されるのだが、私には「文学」自体もよく分かっていない。分かったふりをしても仕方無いので、大概は、どうも良く分かりませんと、尻を巻くっているのだが、今回の人々(作家や学者や音楽家)を観察していて、こんなことを思い出していた。

 大昔、学生の頃、スキーコーチをしながら、とあるユースホステルで冬を過ごすのがお決まりだったが、大晦日の夜にコーチ仲間が集まって「紅白をぶっ飛ばせ」という出し物をするのだ。宿泊客を巻き込んで、歌や寸劇、コントやゲームをして遊ぶだけのことだが、これが結構大受けだった。「大晦日は紅白」という既成概念をぶっ壊す快感があった。これは、ひょっとしたら私の芸能活動の原点かもしれない・・・

 まあ、同じ事ではないだろうが、どうも、何かの既成をぶっ壊して、新しい価値を自ら見出す。お仕着せ、あたりまえ、常識、権威、金といったもの達には従わないという点では、なにか自分と似た様な感じを受けた。

 さて、「声」と言えば、私の活動領域そのものでもあるので、少しその「文学」の最前線を賑わすことになった。はたして氾濫なのか、反乱なのか・・・

姜信子作「声」より谺雄二氏の話「母を想えば」・・・祭文松坂の葛の葉と、谺氏の詩をミックスした朗読文の一部を、瞽女唄調子で今様祭文に仕立ててある。既に何回か披露してきたが、この唄は、やってる方がいつも涙ぐんでしまう。

 もう一編は、新作「こよなく愛する」・・・説経「愛護若」を取り上げ、今回のイベントの為に姜信子が書き下ろした。ここでは、私は「語り部」として居るが、自らが語るわけではない。姜の朗読に合わせて「水」の音を奏でつづける事が新しい取り組みなのだが、唄でなく、朗読に合わせるというのもなかなか難しい。

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朗読「こよなく愛する」・・・「愛護若」水の話・・・

背景の映像は、実際に山に行って沢や滝を撮影してきたもの・・・実は若狭、遠敷の鵜の瀬。東大寺の「お水取り」のありがたい「お水」も映っていました。

この水が、次の新しい「水」の物語に繋がって行く。新春公演の「八百比丘尼」が楽しみです。

 

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討論会の様子:左から 中村和恵 姜信子 木村友祐 温又柔 管啓次郎 各氏

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「鉄犬ヘテロトピア文学賞」第3回授賞式。同時受賞の石田千氏と。おめでとうございました。

 

木村さんよりの舞台写真追加します。

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新春イベント ご案内 「さまよい安寿展」

今年1月の猿八祭りでお世話になった東京馬喰町のART+EAT。来年の新春イベントも決まりました。屋敷妙子画伯の原画展「さまよい安寿展」の期間内で2回のイベント「旅するカタリの夜」を企画しました。詳細は、チラシをご覧下さい。

 「さまよい安寿」は、平成27年度に新潟日報に連載されましたが、この12月に、せりか書房より、画集付き「平成山椒太夫」として出版されます。姜信子の記事もさることながら、毎回、紙面を飾った挿絵の奇妙さが目を引きます。いったい、何故、この絵になるのか・・・。その消息は、2回目のイベントで明らかになるでしょう。尚、原画は、会場で即売されますので、お見逃し無く。

 さて、「三庄(荘)太夫」という書き方は、説経祭文特有の書き方です。江戸時代の後期に薩摩若太夫が創った説経祭文「三庄(荘)太夫」には、独特のストーリーがあります。一つは、上越にある乳母嶽神社の本地を説く「宇和竹恨段」。そしてもっと独特なのは、「骨拾段」です。この段では、由良の三庄太夫によって殺された安寿が、幽霊となって登場するのです。「骨拾」は1回目、「宇和竹恨」は2回目のイベントで語ります。ちなみに、この若太夫祭文の正本は、この会場の付近「馬喰横山町」で、刷られたものですので、それだけでも、レアです。(と、私は興奮しています)

 さらに、今回の見所は、舞踊手堀川久子のと語りの者たちの一夜限りの、セッションです。鳥肌が立つこと間違いなし・・・でしょう。

ところで、「浪読」という聞き慣れない演目があります。姜信子の書き下ろし新作「八百比丘尼」を奈々福さんがお読みになるという訳で、「ろうどく」なのですが、「なみよみ」と読むそうです。これも、ちょっと聞き逃せないです。

さらに、ART+EATの山口愛さんが、安寿の漫画を作成中ですので、これも楽しみです。

 盛りだくさんの企画です。しかもここでしか多分、聞けません観られません。是非おいでください。問い合わせは、ART+EATまで。

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歌と朗読で出会う韓国と日本

神保町の韓国書店「チェッコリ」でのイベントがあります。

10月30日 18:00から

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-7-3 三光堂ビル3階
地下鉄神保町駅A5・A7出口徒歩1分

チェッコリのページをご覧下さい。

 

韓国語は読めませんが、以下チラシです。

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姜信子と八太夫は、「はじまりの歌」「ソルムンデハルマン」等披露します。

九州での拾いもの

熊本の旅の最終日の予定は、唐津で「佐用姫伝説」の調査でしたが、この日の九州北部はものすごい雨でした。鏡山に上がりましたが、車の外にも出られない程の降り方です。海を眺めるどころではありません。大雨洪水警報が出たので、急いで下り、調査は中止。仕方無く、宗像市赤間の古書店アクスにお邪魔しました。びっくりしたことに、ザルや籠の飾りに、浄瑠璃の版本が貼り付けてあります。「巡礼お鶴」でした。これは、どういうことですかと、店主に尋ねますと、ばらばらなので、下張りに使ったとのこと・・・ああ、勿体無い・・・と騒いでいると、まだありますよと、出て来たのがこれ。

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ばらばらなものは、もっとありましたが、読めそうなのは、この二冊。「一の谷嫩軍記熊谷陣屋」と、しかもひとつは「葛の葉」です。ああ、よばれたなあと思いました。それに、ちょうど「親鸞」(吉川英治)を読んでいたところですが、たまたま、熊谷も蓮生坊として登場の場面でしたので、ますます、びっくり。

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ちょっと、読んで見ます。表紙には、「狐別の段」を「こわかれ」と読ませているようです。

「蘆谷道満大内鑑 四段目」

(溜息)『ついたる折からに 立ち帰る 安倍の保名

それと見るより 「やあ 庄司殿御夫婦か」

「お身は保名か のう懐かしや 懐かしや」

「それは この方も

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御同前(然) 先ず奥へ いざ御案内」と立つ袂を控え

「先ず先ず、急に渡す物あり これ預かりの葛の葉 

連れて参った 渡し申す 婿殿」と 引き合わされて

葛の葉は 遉(さすが)二人の親の前 言わで心を知れかしの』

(顔に会釈ぞこぼれける)

 

これは、浄瑠璃「蘆谷道満大内鑑」なので、人間の「葛の葉姫」

が、保名の家を訪ねてきて、狐の「葛の葉」と鉢合わせしてしまうのです。

 

 この本は、稽古本とあるだけに、稽古の跡が良く見てとれます。持ち主は、「藤八平」でしょうか?「古楽」でしょうか?裏書きの村の名前が読めません。

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板元の「西宮新六」は、江戸時代後期の江戸の問屋です。遙々江戸から伝わった台本を使って、炭鉱の町の浄瑠璃が語られていたのでしょうね。

 

六根清浄 秋まつり in熊本

熊本に行って参りました。まだまだ地震の痛手は癒えていませんが、この石牟礼道子氏の物語は、この災害を予言していたかのようです。・・・六根清浄・六根清浄・・・「水はみどろの宮」

9月10日:於 熊本市 橙書店

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物語では、阿蘇が噴火して、大地震が起こる。お寺の屋根が崩れる場面が、お城の崩壊と重なってしまう。しかし、物語は、それで終わるわけでは無い。再生の物語がつづく。人間でないもの達の密かな祈りによって、世界が再び蘇る。蘇生こそが、説経の核心にあるテーマだ。

9月11日:於 久留米市 デイサービスみんなの時間

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片耳オノンの祈り

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権の守(ごんのかみ)の祈り

みんなの時間の中村ひろみさんには、ナレーションを手伝っていただきました。また、職員の皆さんにも、ぶっつけで踊っていただき盛り上がりました。ご協力ありがとうございます。

(映像:山福朱実)