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九州での拾いもの

千年文庫

熊本の旅の最終日の予定は、唐津で「佐用姫伝説」の調査でしたが、この日の九州北部はものすごい雨でした。鏡山に上がりましたが、車の外にも出られない程の降り方です。海を眺めるどころではありません。大雨洪水警報が出たので、急いで下り、調査は中止。仕方無く、宗像市赤間の古書店アクスにお邪魔しました。びっくりしたことに、ザルや籠の飾りに、浄瑠璃の版本が貼り付けてあります。「巡礼お鶴」でした。これは、どういうことですかと、店主に尋ねますと、ばらばらなので、下張りに使ったとのこと・・・ああ、勿体無い・・・と騒いでいると、まだありますよと、出て来たのがこれ。

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ばらばらなものは、もっとありましたが、読めそうなのは、この二冊。「一の谷嫩軍記熊谷陣屋」と、しかもひとつは「葛の葉」です。ああ、よばれたなあと思いました。それに、ちょうど「親鸞」(吉川英治)を読んでいたところですが、たまたま、熊谷も蓮生坊として登場の場面でしたので、ますます、びっくり。

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ちょっと、読んで見ます。表紙には、「狐別の段」を「こわかれ」と読ませているようです。

「蘆谷道満大内鑑 四段目」

(溜息)『ついたる折からに 立ち帰る 安倍の保名

それと見るより 「やあ 庄司殿御夫婦か」

「お身は保名か のう懐かしや 懐かしや」

「それは この方も

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御同前(然) 先ず奥へ いざ御案内」と立つ袂を控え

「先ず先ず、急に渡す物あり これ預かりの葛の葉 

連れて参った 渡し申す 婿殿」と 引き合わされて

葛の葉は 遉(さすが)二人の親の前 言わで心を知れかしの』

(顔に会釈ぞこぼれける)

 

これは、浄瑠璃「蘆谷道満大内鑑」なので、人間の「葛の葉姫」

が、保名の家を訪ねてきて、狐の「葛の葉」と鉢合わせしてしまうのです。

 

 この本は、稽古本とあるだけに、稽古の跡が良く見てとれます。持ち主は、「藤八平」でしょうか?「古楽」でしょうか?裏書きの村の名前が読めません。

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板元の「西宮新六」は、江戸時代後期の江戸の問屋です。遙々江戸から伝わった台本を使って、炭鉱の町の浄瑠璃が語られていたのでしょうね。