稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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語り芸パースペクティブ 第3回目 瞽女・祭文

玉川奈々福がたずねる「語り芸パースペクティブ」全11回+番外1の、1回目・2回目は客として、3回目は光栄にも演者として参加させていただきました。素晴らしい企画をありがとうございました。第3回は「説経祭文+瞽女唄」という内容でした。瞽女唄は、萱森直子さんが、祭文松坂「葛の葉子別れ」を読まれましたので、結局、「祭文×祭文」だったのかもしれません。私は「小栗判官」の鬼鹿毛「曲馬の段」をやりました。「祭文」ですから薩摩若太夫正本です。但し、例によって、作家姜信子による演出が入って、面白くなっています。なにしろ、奈々福さんの会で、面白く無かったと言われては申し分けがないので、節の手もいつもより派手。この一週間、大変真面目に稽古もし、気合いも十分でしたが、気負い過ぎたのか、前日は眠れませんでした。

 鬼鹿毛「曲馬の段」は初演でした。「説経」は、本来泣き節ですが、「説経祭文」にはチャリ場があります。しかし、これが難しい。人を泣かせるのは結構できるものですが、笑わすというのは難しい。その上、多分その当時は、それで笑えたのかもしれないが、現代に通用するとは限らない。これまでは、正本通りにやっても、なかなか面白いというものにならなかったのでした。

 今回の狙いは、ズバリ笑える「祭文」だったのですが、どうだったでしょうか。まだまだ、練らなければなりませんが、手応えはいただきました。沢山の励ましのお言葉、ありがとうございました。これからも、新しいチャレンジをして行きたいと思っています。

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瞽女唄:葛の葉子別れ 萱森直子

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説経祭文:小栗判官 曲馬の段 渡部八太夫

「ひぇえええ、小栗が鬼鹿毛に乗ってやって参ります。」

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後半の鼎談:玉川奈々福 八太夫 萱森直子

撮影:田島利枝

萱森さんの師匠、小林ハルさんの話しがとてもよかったです。私は語りに関する師匠はいませんでしたので、羨ましいかぎり。私はといえば、いろいろ考えてはいましたが、うまくしゃべれませんでした。ただ、今回お伝えしたかった事は、「説経祭文」は「説経浄瑠璃」ではなくて、やはり「説経祭文」と言う方が説明しやすく、理にかなっていて、その出自も含めて、より理解しやすいのではないかということです。「説経」は仏の教え、「祭文」は神を言祝ぐ、合わせて「説経祭文」。正に神仏習合なのですが、その寺からも神社からも抜け落ちた、隙間に存在している。そのあたりを、今度はもう少しうまくお話出来るようにしてみたいものです。

 と、ここまで書いて、ようやく思い至りました。話したかった事は、説経のこれまでではなく、色々に派生した説経の系統の中で、自分が選んだのは「説経祭文」で、その「説経祭文」の持つ背景世界を共有して、新しい「説経祭文」の世界を切り開いて行きたいということだったようです。