稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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第3回 旅するカタリと山伏祭文 無事終了  

西荻窪、忘日舎での3回シリーズの企画が、無事終了いたしました。石牟礼道子さんの作品を中心に据えて、石牟礼ワールドの浄瑠璃化を試みる貴重な「場」を提供していただいた店主、伊藤幸太氏に改めて御礼申しあげます。毎回のお客様とも顔なじみとなり、単なる情報交換というだけでなく、「文字」と「声」にまつわる様々な体験が共有される「時間」になったように感じました。演じる側と観る側の境も、あなたと私の境も、越境しながら、各自が世界の中心に居るという存在感をそのままに、ばらばらに繋がる。ひとつのものがたりが、各自の中で、それぞれ別の世界を創る。たとえば泡宇宙論マルチバース)のように。

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「西南役伝説」は、石牟礼さんの初期の作品ですが、石牟礼さんの視点はもう「苦海浄土」と通じるものがあります。本編よりも付録的に付けられている「拾遺」に引きつけられます。拾遺一が「六道御前」。ここに、既に石牟礼さんがはっきりと「浄瑠璃」を意識して書いておられることがよくわかります。「それでは、じょろり浄瑠璃)ば、かたりましょう」というのは、六道御前の言葉というよりは、石牟礼さんの言葉として憑依します。

 ちなみに拾遺二は、「草文」です。「あやとりの記」にでてくる「犬の仔せっちゃん」のモデルになった話しだろうと思います。この物語も、そのうち聴いていただけることと思います。

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姜信子の「アナキスト宣言」は、「ずずかん」という雨乞いから始まります。この「ずずかん」は、「椿の海の記」に出てくる天草の雨乞いのことです。バックの映像は柏崎の龍神様です。お客さんの中に、この「ずずかん」をやったら、肩に憑いてたものが落ちて軽くなったと喜んでおられる方がいらっしゃいました。憑きものも流して清めていただける有り難い龍神様でした。「千年かけて清め奉る」

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さて、「アナキスト宣言」は、さいごに、「さあ、くるっちまえよ」と呼びかけます。それは多分、「あんた、正常バイアスかかってんじゃない?」と言っているのだと思います。あなた、大丈夫?それでいいの?・・・語ってる自分に・・・つきつけられる「宣言」。