1年前のフランスへ公演に出かけた時に持っていった本は、金時鐘氏の「猪飼野詩集」だった。ごつごつとゲンコツがとんで出てくるような詩がならんでいる。一週間フランスの片田舎の古城「真夜中劇場」に滞在して、毎日入れ替わりやってくる子供達に人形浄瑠璃を見せた。一日一公演だから空き時間がたっぷりある。フランスの古城の一室で金時鐘の詩と対峙したわけである。そのうち、「うた またひとつ」外いくつかの詩にすいつけられて節付けをした。フランス産れである。
この間は、「朝鮮と日本に生きる-済州島から猪飼野へ」(岩波新書)を読んだ。すっかり肝をわしづかみにされた。
最近遅ればせながら、ようやく朝鮮のことがわかってきた。日本と朝鮮の事実を残念ながら日本の教育は正しく伝えていない。近代日本の悪行を教師としての私は、正しく教えることができなかった。残念であるが取り返しはつかない。これからできることは、語り手として事実を語ることだと思う。
2月の旧正月に、幸運にも金時鐘氏の自宅にうかがうことができたので、無理矢理「うた またひとつ」を語らせていただいた。なんと無謀な・・・
日本語による日本語の破壊をしようとする詩を、三味線で語るというのはいったいどうなんだ・・・との声も。
まあ、とにかく、ご存命の内に、金時鐘さんに聴いていただいきたいという一心だったのですが、以下のようなことになってしまいました。
6月16日 大阪大学中之島センターで、「うた またひとつ」を語れとの金時鐘氏よりのご依頼、承りました。