稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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金滿里VS八太夫 モノガタル カラダと声 

前日のゲネプロと当日の舞台と、一人の舞踏者との差しの勝負は、もの凄い緊張感の中での探り合いの二日間でした。ゲネプロでは、私は、浄瑠璃的な約束事の感覚から抜け出ていなかったようです。それは、例えば人形に息を吹き込もうとする意識や所作事のキメみたいなものを求める態度だったと思います。だいたい、三味線の作曲というのは動きを想定しているわけですから、逆にそういう動きを期待してしまうわけです。

しかし、これは、生身の人間にマウスツ-マウスで、強制的に息を吹き込もうとするような不自然なことであることに、だんだん気がついていきました。声とカラダが自由にぶつかり合えばいいんだなあとわかってくると、合わせるとか待つとか、そういう些末なことはまったく必要ない世界に辿りつきました。ああ、モノガタル場になった。あっちの世界にちょっとは行ったかもしれない。二日間、朝から晩まで踊り続けられた金滿里さんに脱帽。そもそもこの無謀なプログラムは、滿里さんの発案ではありますが、結果的には、ここまでやらなければ、多分得るものも少なかったかもしれないと思うと、芸に対する真摯な貪欲さが劇団態変を成立させている力であることがよくわかりました。

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第1回目 説経祭文葛の葉

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恋しくば尋ね来てみよ和泉なる信太の森の恨み葛の葉

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第2回目 石牟礼道子苦海浄土」より「ゆき女聞き書き

病院で堕胎させられたゆき女は、夕食に出された魚が、自分の子供に見えて、それをつかまえようとするが・・・

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第3回目 宮沢賢治「虔十公園林」

虔十は、縄の帯をしめて・・・空を見上げては・・・笑っているのでした・・・

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いのちの音曲集、写真は最後の一曲にした 石牟礼道子「花を奉る」

谺雄二「なぜ今ライなのか」 金時鐘「うた またひとつ」

最後に詩をもってきたのは、そもそも大きな成功。戯作者姜信子の構成力。ストーリー的なものからより抽象的なカラダと声へと上昇していって、最後に花を奉って、彼岸に到達した。

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あの世へと導いた口先案内人姜信子

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photo by bozzo

出演者一同

再現不可能の世界に立ち会っていただいた皆々様も同様に「場」を創った共犯者であります。ご協力ありがとうございました。

 

モリ・ボッゾさんから、写真の提供を受けましたので、追加いたします。

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photo by bozzo