稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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南相馬 小高 大悲山大蛇物語

南相馬小高にある「おれたちの伝承館」:3.11&福島原発事故伝承アートミュージアム に於いて、「百年芸能祭」が開催された。すばらしい増殖である。こうして百年粘菌の菌糸が粛々とはびこっていくのである。

 ところで、この小高では「大悲山の石仏」薬師、阿弥陀、千手観音の三磨崖仏が有名である。その大悲山には「盲僧玉都(たまいち)」と大蛇との物語が伝えられているのでこれをひとつ語らせていただこうと、大悲山に詣でた。

その話というのは、こうである。

 

大悲山の大蛇

時は、南北朝の御代

南相馬の郡、小高(おだか)郷に、

優れたる盲僧琵琶師、ひとりあり

その名は、「玉都(たまいち)」と申すなり

盲僧玉都(たまいち)、毎夜、大悲山薬師堂にお籠りあり

琵琶を弾き、目、開き給えと、願掛し給うところに、

ある夜の丑三つ時、見慣れぬ武士(もののふ)現れけり

 

やがて、玉都(たまいち)が琵琶を置くと、男は、

「毎夜聞こえる、結構な琵琶の音、

紛う事なき、玉都(たまいち)殿

今宵は、とうとう、ここまで、邪魔を仕り候

そういう我は、誰あろう、この薬師堂の池に住む大蛇の化身なり

さて、霊力溢れる其方の琵琶の音により、

我が身の鱗が、気持ちよく震動なし、

身の丈たちまち、百尋あまりになったこと

これ、偏に、汝のお陰なり、

しかしながら、この薬師池では、狭くて叶わぬ

そこで、明日より、七日七夜、大雨を降らせ

この小高(おだか)郷全体を大沼となし

龍にならんと欲するものなり

もし、そのこと叶うならば、

お礼に、御身を助け、その目を開けてしんぜよう

されども、もし、この事を

誰かに、もらしたのならば、命はないぞよ」

と、告げるやいなや、かき消す如くに消え失せけり

 

玉都(たまいち)、はっと驚き

「むう、これは、満願成就の知らせかや?

いやいや、我は仏弟子なり、

大蛇の化身のお告げとは、これ如何に?

さわさりとて、黙っていれば、目が治る

しかし、治った目で見るものは、水の底の小高なり」

どうしたものかと、玉都(たまいち)が、

うんうん、うんうん、頭を抱えて苦しめば

やがて、本堂の薬師如来、燦然と輝きだし

霊験あらたか、薬師如来の御来臨

 

「おおおん、ころころ、玉都(たまいち)ようく聞け

小高の郷の人々、田畑、水没させること、まかりならん

大蛇の目をもらうよりも、心眼開け

これより、急ぎ大蛇を封じる鉄釘百本、用意なし

蛇巻山に打ち込んで、大蛇を成敗仕れ

オンコロコロ」

 

玉都(たまいち)、はっとばかりに、飛んで起き 

これぞ、誠の霊夢なりと、手を打って

杖を突き突き、目指す所は、小高城(おだかじょう)

御注進、御注進と、玉都(たまいち)が、

もうすぐ、大洪水になりますと、事の次第を知らせれば

殿様、こりゃ、一大事と、

鉄釘、百本、直ちに作らせ

いざ出陣と、向かう先は、蛇巻山

片っ端から、鉄釘を、かっし、かっしと打ち込めば

さすがは、薬師如来の呪い釘

大蛇はたまらずのたうち回り

龍にもなれず、よろよろと、

病み崩れて、腐れ果て、やがて薬師の池に沈みたり

 

目明きの夢は叶わねど

小高の郷を、洪水より救いたる、

盲僧玉都(たまいち)、郷土の誉れ

さてまた、薬師如来の霊験、おそるべし

疫病神にもなりうるぞと

後の世までも、知られたり

 

2024年12月9日 渡部八太夫 作

参考HP:おだか 通行手形 :うつくしま電子辞典

 

そして、ここ、「おれ伝」の空気を震わせる事が出来たのは望外である。

それは、即ち、この場があわいであり、語りは、言霊寄せであり、供養であり、予祝であるという、そのような場を出現させしめ、皆で共感できたことがなによりである。

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ところが、この「おれ伝」を宇宙レベルで震動させたのは、実は「仲野麻紀」であった、彼女の循環呼吸による奏法にはもの凄い霊力がある。彼女は山内若菜作の天井画「命煌めき」と共に、「鳳凰」(佐藤榮作作の彫刻)を羽ばたかせ龍を吹きあげた。いや、噴き上げたか?その部分だけこっそりとアップ。

https://youtu.be/psorTQexmuo

今回の百年芸能祭では、なかなかお逢いできない貴重な人々と繋がることができたのは本当によかった。こんな馬鹿な人間ばかりの世の中に、本当にまともで、生きづらい人々がまだまだいると感じられてよかった。特に生田まんじさんの歌は、活動家ならではの説得力があって、聞き惚れた。中身があるとないとではこんなにも違うか。さて、自分を省みて、寂しいかぎりだが、ここがまた、我々粘菌のいいところは、追従もしないところだろう。自分のやり方でやるしかない。

というわけで、大きなイベントが無事に終わってなによりだが、今年も次から次とイベントが・・・・

5月24日には、京都の東九条に進出だ!

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6月からは、「旅するカタリ」シリーズが復活!会場は大阪深江橋のふうらです。

VOL1が、 6月22日(日)14:00から

VOL2は、10月19日(日)14:00から(※下のちらしは間違い)

VOL3は、12月21(日)14:00から、だけどこれはほとんど忘年会だな

さらに、8月31日(日)には、大阪本町のイサオビルで、多彩な顔ぶれで、百年芸能祭の語り編が開催されます。皆さん、宜しくご予定ください。