稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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「旅するカタリ」九州巡業日記2019

8月29日(木)午前十時前に奈良を出発。計画では、宮島に渡って、弥山に登る予定だったが、前日までの大雨であきらめ、ゆっくりの出発となる。車の自走では、一日目は、下関までが限界と決めていたが、やはり予想通り、約9時間をかけて、ながーーい中国地方を走り抜けた。現在の愛車は、エクストレイルである。

今回の九州巡業は、前半が野生会議99企画のアナ-キ-in水俣集会。後半は、従来の巡業という長丁場になりました。

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陸運局にて奈良ナンバーに変更した時の写真。8(野生)99(ペクス)8(八太夫)。というわけで、車自体も野生化させて臨んだ九州巡業でした。

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8月30日(金)英彦山周辺の修験を調べようと、下関から大分道を南下して、まず求菩提山資料館を訪れた。求菩提は「くぼて」と読む。

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最盛期には、五百坊、千人以上の山伏が、山中に居たというから圧巻である。この山の特徴は、おびただしい経筒が出土していることだが、遺物の中に、琵琶と三味線があるのがおもしろい。

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つづいて、英彦山にも参拝したが、今回は奉幣殿どまり。求菩提山もそうだが、次回は山頂に詣でたいものである。

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英彦山の登山口。ここから先が神域という風情。残念だが、ここでホラ貝を吹いておしまい。一路、水俣へ。夕刻、光凪の不知火海が、歓迎してくれたようだ。

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--------------------------------------- 8月31日(土)野生会議99企画「アナキストin水俣」の初日。会場は「愛林館」。プログラムは会場地域「水俣市久木野」の探索だが、食料買い出し係で出張し、水俣市内に精通した。まあ、アナキストの集会といっても専門的なことはわからないので、当然、担当は「芸能部」、出番は夜です。高倉さんとの約束だった1年越しの「みなまた神楽」でしたが、今回は、大阪からの強力な助っ人「ケセランパサラン」のお二人(太田テジョンさん、深田純子さん)がいらしゃるので、気が楽。さらに、チャンゴを相思社の小泉さんに叩いてもらい、山内明美さんには笛を吹いてもらい、そして、高倉敦子さんが踊るという、水俣でなければできない「神楽」になって、本当によかったです。原文は、石牟礼道子さんの「みなまた海の声」でした。さらにゲストの「家内(やうち)ブラザース」で大笑い。

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みなまた神楽

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大爆笑の嵐、家内ブラザース。

---------------------------------------9月1日(日)朝から夕方まで、座学。まじめやなあ。夜になれば出番。二夜目は、本当は「雨乞い」踊りの予定だったんですが、今年は、散々降っている上に、次の週に水俣にやってくる「渋さしらず」公演の為に、なんとしても雨は避けたいというのが、水俣全土の願いとあって、急遽「晴れ乞い」の祈祷をすることになりました。これはもう全員で踊ったので、龍神龍主末神々様もお聞き届けなされたようでした。めでたしめでたし。

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さらに、ケセランパサラン歌謡ショ-で、なつかしのメロディを堪能させていただき、八太夫は、苦海浄土から「ゆき女聞き書き」を初演しました。

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9月2日(月)最終日の午前中は、冷水水源、龍神様とフィールドワークをして、午後からは、相思社へ。永野三智さんとの交流会。永野さんは、生まれながらにして野生であることが良くわかった。理論ではなく、生き方そのものなので説得力が違う。体制からすり抜けてゆく。午前中に訪ねた「冷水水源」の森は、彼女の小学校時代の「逃げ場所」だった。「アナキストは、逃げろ」が新しい標語になった。

 

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9月3日(火)ここからは、「旅するカタリ」。いつもガイドをお願いする小里さんに連れられて、水俣から少し北側の女島の周辺を探索し、東泊(こちどまり)の緒方正人さんを訪ねる。

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女島神社。昔は海への突端にあった。水中には岩牡がびっしり。

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水俣病訴訟では、先頭を切って闘った緒方正人さんは、あるとき、「俺自身がチッソだった。」といって、金でしか解決できない裁判から身をひいたという。その緒方さんの話は、たとえば「番地はいらない」。今でも無番地。水俣の緒方で届く。役所が一番困ったのは、「本籍いらない、なくしてくれ」事件。目からうろこというか、国や行政から、当たり前のように押しつけられて、疑問も持たないほどにすり込まれている「当たり前」のことが如何に多いかを思い知らされる。それは、非人間的なものばかりだ。この方も、生粋のアナキストとして尊敬。

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「本願の会」緒方正人作「トトロ仏」

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 9月4日(水)午前中、永野三智さんに誘われて、砂田さん宅の乙女塚に詣る。胎児性水俣病の方々の慰霊碑の前で供養の祭文をひと語りする。(苦海浄土より「草の親」)

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午後は、水俣から八代に抜けて、去年訪ねた天台宗金海山大恩教寺「釈迦院」を目指したが、開いていなかった。よく見ると毎月8の日、つまりお釈迦様の日に開けるという。去年、いきなり行って開いていたのはラッキーだったらしい。でも、実はここの「ぽっくり」死ねるお守りを、頼まれて遙々来たので、あら残念で帰るわけにはゆかない。ちょうど、連絡先が書いてあったので、電話して事情を説明。翌日10時にいただけることになった。まずは、ひと安心。

この日は、緑川の源流のある山都町の「緑仙峡清流館」に宿泊。夕方、「穿の洞」に参拝する。「みどろの宮」とは、ここのことである。

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9月5日(木)午前10時、再度「釈迦院」に登り、ありがたい「ぽっくり」のお守りをいただく。法華経観音菩薩普門品は、まあ、普通だなあと思っていたら、大般若経で転読をしてくれて、その風をかけていただき、しかもその大般若経でバシバシ叩いていただいた。感激。この「ふんどしお守り」が大切。下の世話にならない。ここの方丈さんは、熊本金峰山の三ノ岳観音聖徳寺の方丈さんなので、験力が強い。

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午後は知人宅を訪問して、夕方ようやく熊本、橙書店に到着。山福さんと樹くんをゲストに「旅する野生のカタリ」の会。山福さんの歌の実力が上がっていて、うれしかった。八太夫は、アルテリ8号から「おしゃらさま」、椿の海の記から「ぽんた」それぞれ初演でした。同じく「見世物小屋」は、あんまり、みんなしゅんとしたのでおまけ。店長の田尻久子さん曰く、「石牟礼文学は、じょろりで聞くのが一番。」ありがたや。

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9月6日(金)台風が近づいているが、「晴れ乞い」の効力は依然として発効中。

金峰山や霊厳禅寺をまわる。有名な五百羅漢や宮本武蔵五輪書を書いたという霊厳洞を観光。

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夕方、久留米のデイケア「みんなの時間」の到着。本日の「旅するカタリ」は、「花を奉る」から、だんだん人々の願いで祭文が語れるようになってきた。続いて苦海浄土より「ふゆじどん」。直前にネットからおろしてきた「地獄」「極楽」の絵を映して、とうとう「絵解き」までやるようになってしまった。椿の海の記より「見世物小屋」。最近のおまけは、「腰まで泥まみれ」。この写真がうける。

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9月7日(土)午前中は、太宰府の近辺。宝満山竈門神社、九州国立博物館等を見学。九博では、修験の資料を買い漁り、入館はせずに、ロビーの神楽の展示で満足。

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午後には、福津市津丸の「うらんたん文庫」に到着。今度は、山福朱美さんの展示「パンデレッタ」のプレイベントのゲストとして出演。タンバリンに版画を貼り付ける趣向の展示。「権の守」タンバリンを買いました。久しぶりに宮沢賢治「サガレンと八月」からスタート。九州は「修験」についてとても話しやすいので、宮沢賢治=山伏の話を展開。そして、石牟礼さんにワープして「ふゆじどん」。おまけは、やっぱり「腰泥」でした。

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山福朱美&末森樹 in  うらんたん文庫

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9月8日(日)福津発9:00~奈良着19:00。眠かった・・・

これまでで一番長い「旅するカタリ」でした。今回もたくさんの方々に出会い。お世話になりました。ありがとうございました。ご恩は奈良千年文庫でお返しいたします。関西にお越しの際は、是非に、お立ち寄りください。