稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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水俣 トヨ子ちゃんのお弔い会

水俣病公式認定患者というくくりがあって、その線引きがおかしいと思うが、その第1号患者が八歳で亡くなった溝口トヨ子さんだという。相思社の仏間には、トヨ子ちゃんの遺影を持つ母女の姿が飾られている。その仏間に、毎日のようにやってくるのが、トヨ子ちゃんの姉、恭子さんだ。

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昨年の5月に、相思社を尋ねた時に、一緒に昼ごはんを食べて、「トヨ子桜」(恭子さんが植えた桜)の話を聞いた。その時に、来年、桜の花が咲いたら、トヨ子ちゃんの会を開いて、「トヨ子桜」を語ろうということになった。残念ながら、桜の季節は逸したが、ちょうど、その一年後に、乙女塚の慰霊の約束も合わせて、その約束を果たす機会がやってきた。その名も「トヨ子ちゃんのお弔い」

5月15日(土)大雨・・・九州はもう梅雨入り・・・って、いくら、雨ごい祭文の「ズズカン」を練習したからって、それはないでしょう・・・効きすぎです。

オレンジ鉄道が30分遅れになるような雨の中、昼過ぎに新水俣着。車で迎えていただいて、「袋」というところにある水俣病協働センター遠見の家(NPO法人)に着いたころは、説経的に言うなら「雨は車軸を流しける」でありました。

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コロナへの配慮もあって、ごく短時間、チンドンや李政美さんの歌を楽しんでいただきました。

さて、いよいよ、本番。相思社の仏壇に、供養の写経石と十一面観世音写仏を納めさせていただき、一年越の約束「花非人(はなかんじん)」(苦海浄土第三部天の魚第四章花非人及び第二部神々の村第六章実る子より)を恭子さんに聴いていただく。

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動画はこちら https://youtu.be/0BhYyMwMfLI

ビデオでも、わかると思いますが、しばらく止んでいた雨が、八太夫が語り始めるとドーーーっと降り始めます。そして、李政美さんが歌い始めると止んで静かになり、しかも虫までもがコーラスするという、まさに神がかりの舞台。

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ピヨピヨ団は、いつものチンドンを披露。動画はこちら   https://youtu.be/9-vjUSCj31A

今年の「ズズカン」は雨ごいではなくて、「コロナ退散」にしたのですけど、雨やまず。もちろん、コロナの被害は当然ありません。

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ピヨピヨ団の水俣支部ができました。ジャンベ担当愛隣館の沢畑亨さん(後列中央)支部長は右端、チャンゴ担当、相思社職員の小泉さんです。

恭子さんが、大喜びで、「来年は桜の花の下でやりましょう。いかにも、いかにも」と言ってくださいました。来年の楽しみができました。「いかにも、いかにも」ですぐ一年過ぎますよ。

 

5月16日(日) 夜中の雨で、避難勧告が出ていたらしい。せっかく緒方正実さんに護摩木を作っていただいていたのだが・・・残念だが、乙女塚での護摩焚きは諦めよう・・・ところが、朝ごはんを食べていると、なんだか、だんだん明るく、雲が切れて、日もちらちら・・・ややや、これは、晴れ女李政美さんの法力か!急いで、支度を整えて出発。

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皆さんの願いが書かれた護摩を焚き、念仏踊りをして、乙女塚を供養しました。

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乙女塚で大騒ぎをしていると、麓の家にお住まいの塚守、砂田エミ子さんが登ってこられました。

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砂田エミ子さん(右)と相思社の永野三智さん(左)

予定では、縁側で聞いていただく予定でしたが、塚の前で語れてよかったです。それに、見上げた空と風に揺れる木の葉が、なによりも心地よく、乙女塚の魂も喜んでいるなあと実感。

砂田明 作 「起ちなはれ」  途中(2分57秒ぐらいのところで)普段切れない、中糸が根切れしました。今度は明さんのいたずらでしょうか??いずれにしろ、可愛がっていただきました。動画はこちら

https://youtu.be/a94QTXQniHk

 

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午後は、中尾山の仏舎利塔日本山妙法寺)の入魂式に列席。これも、奇跡的な偶然。打ち捨てられた仏舎利塔をガイア水俣の高倉敦子さんが一年前に見つけて、それを再興する劇的な瞬間に立ち会わせていただきました。みんな神がかってますよね。

 

さあて、仕事は終了、温泉でも行くかあと、行ったのはいいけれど

・・・湯の鶴温泉のとある日帰り温泉・・・

「あんたらどこから?大阪?・・・そんなにたくさん、うちには入れません」

ええ?なんで・・広いのに・・・最初、ピンときませんでしたが、

次は、道端で、

おっさん曰く 「大阪からコロナまき散らしにきたのか」

ピヨピヨ団団長曰く 「PCR検査とか抗体検査とかしてるんやけど」

おっさん 「そんなのあてになるか」

また、聴いた話では、熊本ナンバーの車が、鹿児島県内で生卵を投げつけられたとか・・・

関東大震災朝鮮人虐殺と同じことをしているんじゃないですか?

温泉センターで温泉には入れましたが、落ち着きませんでした。

来訪神を大切にできないと、巨旦将来(こたんしょうらい)になりまっせ。

さあ、蘇民将来の所で、飲もう飲もう。

 

5月17日(月)またまた雨。浸水被害の地域もあるらしい。午前中、水俣歴史考証館見学。熊本に移動。久しぶりの熊本「橙書店」。休みなのに、無理言って開けていただき、数人の友人たちを前に「石牟礼じょろりの会」を開く。石牟礼道子作「苦海浄土」第三部天の魚第三章舟非人より「舟非人」+ケセランはちらんチンドンライブ

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ところが、最後でまたまた、トラブルーーーー。ピヨピヨ団全員と大荷物で8人乗りのレンタカーも目いっぱい。哀れ、三味線が犠牲となり棹が折れました。

 三味線なしで語れるかなあ、そりゃ、本当のデロレン祭文になちゃうよ。

とりあえず、「森楽器」に行ってこよう。実は、この楽器屋さんは三味線のお店で、ネット上では、「和楽器市場」と言いまして、私は会員で、しかも常連。三味線の皮もここで張ってもらっている。「橙書店」から下通の「森楽器」まで10分ぐらい。

折れた棹は、直してくれるというので、入院させて、稽古用の三味線を無理言って貸してもらう。捨てる神あれば、拾う神あり。上がったり下がったり、楽しいねえ。

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借りた三味線で語る八太夫、民謡用の単棹なので、ツボが微妙に違うが、胴かけが法被と同じ色で、帯とも妙にマッチ。音も良く、本当に助かりました。ありがたや、ありがたや。

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THE PIYOPIYODAN

右端は宮城教育大の山内明美先生(ピヨピヨ団ではなく、自称インディペンデント 笛担当)。ピヨピヨ団の遠征第2弾は、9月三陸の予定です。もちろん、今度は、山内先生の主宰です。

 時節柄、多忙、心労の絶えないであろう相思社理事の永野三智さんのお陰で、無事に供養の会ができました。誠にありがとうございました。これは続けていきたいと思っております。3月上旬、トヨコ桜が咲く季節に。しかし、不知火じょろりを語り、ズズカンを踊ることは、水俣だけでなく、近代国家の犠牲になった生き物すべてに対する供養だと思っています。ですから、これから、ますます語り続けることが必要だと思っています。