稽古場:ゆやんたん文庫 奈良市敷島町
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奥浄瑠璃 田村三代記 2月6日(日)

ちょっと変わった浄瑠璃の系統がある。東北地方特に宮城県を中心に伝わった独特の語り物である。それも、もう戦後には途絶えてしまっているが、僅かな音源を頼りに再現を試みてみた。それを、2月6日(日)に演じることになりました。

「モノ」語りは増殖する。                    気仙沼リアス・アーク美術館「被災物」との出会いから。
【オープニングイベント】
 東北の語り物/東北の想像力 その1
2022年2月6日(日) 午後2時~
宮沢賢治を歌う 
浄瑠璃「田村三代記」を語る 
語り&三味線: 渡部八太夫   
  口先案内人:姜信子
参加費:2000円
 

https://www.facebook.com/events/1265064497314788?ref=newsfeed

 

さて、奥浄瑠璃のうち特に独特なものの筆頭が「田村三代記」である。題名から連想するように東北の覇者「坂上田村麻呂」を題材にした物語ではあるが、その内容は奇想天外である。ざっと、その「三代」を眺めると、

 まず一代目は、「五條中将年春」。この方は星から生まれた「星帝」と呼ばれる。この「年春」は帝に逆らって流罪となるが、流罪先で、龍女と交わり、二代目の「二条中納言年光」、別名「大蛇丸」を設ける。まるで小栗判官のような話の展開。

 さて、一代目は大した活躍もしないが、この二代目「年光」が大活躍。都の民を怖れさせた「大蛇」退治をしたことによって「鎮守府将軍陸奥守」に任命されて東北平定のため、多賀城に赴任。人望により無血平定。そこで、九門弥長者の水仕「悪玉御前」と出会う。コレも、小栗判官の「照手姫=小萩」を思わせる設定。

 この「悪玉」の「悪」というのは、わかりやすく言えば「醜」のこと。元々、絶世の美人だったのだが、丹後で盗賊に襲われて後、人買いの手に渡り、流浪の身となった時、観世音に祈念して「醜女」(しこめ)にしてもらったというのである。普通の人が見ればブスにしか見えないが、神力の備わった者には絶世の美女とみえるのであった。わざわざ丹後なのは、山椒太夫の影響だろうか。それはともかく、二代目田村将軍の目には美女に見えた訳である。

 家来達は、「???」であるが、田村将軍はゾッコンである。やがて、田村将軍は任務を終えて都に凱旋。残された悪玉御前は一子「千熊」を産む。これが三代目の田村になる。やがて、「千熊」は父に会うために都に上るが、親子対面に当たって、「鬼鹿毛」「矢取」の試練を与えられる。なんだこりゃ、まったく、「小栗判官」のぱくりじゃないか。エンディングは、悪玉御前を都に迎えて、めでたしめでたし。勿論、もう悪玉ではなく誰が見ても将軍に相応しい御台様です。

 因みにこの話は、音羽山清水寺御建立の縁起として書かれている。東北の侵略者としての田村ではない、不思議な物語。

 

 で、これも全部やってられないので、「悪玉御前口説」という場面を15分ほどで演じてみます。

 もう少し詳しく言いますと、悪玉は千熊を産んだ後、子供がいなかった主人の九門弥に千熊を取り上げられ、水仕の身分を解放するから、親子の縁は切れと言われます。しかし、ある時、千熊は自分の出自を知ってしまい、悪玉御前に親子の名乗りを迫ります。ようよう親子の名乗りを果たした千熊は、父に会うために都へ旅立つという場面です。

こんな変わり種の物語を聞きたい方は、大阪深江橋。スペースふうらまでお越しください。