伊那谷の知り合いに田中宏氏がいる。詩を書いたり絵を描いたり多才である。SNSでたまたま、彼の詩を目にした。
この時代は、ひとつの"大多数"主義にむかって不確かな航海をしている。
ぼくらは、とっても気持ちの悪い「船酔い」をしているのに
それを感じないばかりか、むしろ愉しむ人々のなんて大多数なことだろう。
この目隠しされた船は、強大で大多数でBIGでMassで、
みんなが「いいね」するという、無窮の白い海へ舳先をむけてわたっている。
CGの巨大な客船のように、電飾は雲をも照らし大音量で、にぎやかに、明るい。
明るいが、ひとりひとりの影がかすかだ。ひとりひとりの孤高の影を描ききれていない。
群れなす無影灯が、ひとりひとりの小さく尊くいとおしい陰影を焦がしていった。
手術台に置かれているのは、きざまれた影。それは、わたしの影でありあなたの影でもある。
こんなに星は明るいのに、こんなにも人は暗い。
船底では氷の塊が、象の足音をたてているのに、人々の耳は、化石の夢を聞ききつつ眠る。
人頭税のマスゲームのコマのようにあつかわれて、そこに影も光もない。
きれいなお面を買うために、人は人を棄てる。うつくしいたべものは、人をたべものにする。
ゆたかな家は、家人を喰らう。
花瓶の濁った水は未来の涙なのかもしれない。
ふちの割れたガラスコップを洗うたびに、どうしようもない運というものを夜に想う。
田中宏(2023/08/18 02:07a.m.)
最近、故国本武春さんのビデオを見直して、三味線でのコード演奏を工夫している。内容的にも共感できるので、この詩を単純なコードで歌ってみることにした。雰囲気的にはAmバッキングのつもりでやってみたが・・・・ちょっとこれじゃ、中学生っぽいかな。